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トラック運転者の働き方改革について

① 時間外労働の上限規制と改善基準告示

労働時間の上限を示す図。法定労働時間は1週40時間・1日8時間。時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間。特別条項の適用で年960時間まで延長可能。

2024(令和6)年4月から、トラック運転者にも、年間の時間外労働を960時間までとする 時間外労働の上限規制 が適用されるとともに、拘束時間や休息期間(いわゆる勤務間インターバル)について、改正された 改善基準告示 の適用も開始されています。

改正された改善基準告示の主な内容(2024年4月適用開始)

2024331日まで

202441日以降

1年
拘束時間

3,516時間以内

原    則:3,300時間以内

例外(※1):3,400時間以内

1
拘束時間

293時間以内
労使協定により、年6か月まで320時間まで延長可

原    則:284時間以内

例外(※1):310時間以内(年6か月まで)

1日
休息期間

継続8時間以上

原則:
継続11時間与えるよう努めることを基本とし、
9時間を下回らない

例外:
宿泊を伴う長距離貨物運送の場合(※2)、継続8時間以上(週2回まで)
休息期間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える

※1 労使協定により延長可(①②を満たす必要あり)

  • ① 284時間超は連続3か月まで。
  • ② 1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める。

※2 1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450㎞以上の貨物運送)で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合

詳細はパンフレット 「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」 をご覧ください。

長時間労働の改善を通じて勤務環境の改善を行うことは人材確保の観点からも重要であり、今後ますますトラック運転者の長時間労働の改善に向けた取組を進めていくことが求められますが、トラック運転者の長時間労働の背景には、長時間の 荷待ち・荷役作業 など取引慣行上の課題があることから、荷主の方とも協力した取組が必要となります。

② 物流改正法の背景と目的

物流は国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラですが、物流産業を魅力ある職場とするため、2024年4月から、トラック運転者にも時間外労働の上限規制が適用される一方、人手不足の中で、何も対策を講じなければ物流の停滞が生じかねないという、いわゆる物流の「2024年問題」に直面しています。

これに対応していくためには、荷主と物流事業者とが協力して、物流の効率化や商慣行の見直し等に取り組んでいくことが必要です。

例えば、荷主の方と協力して、長時間の荷待ち・荷役等作業といった取引慣行上の課題を解消していくことは、トラック運転者の勤務環境の改善や、物流を担うトラック運転者の人材確保にもつながり、結果として、物流の持続的成長を図ることにもなります。

このような、物流に携わる多様な関係者の連携・協力による物流の効率化や取引環境の適正化等に向けて、 「物流革新に向けた政策パッケージ」 に基づき、2024年(令和6)年4月に成立した 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(物流改正法) が、2025(令和7)年4月1日から順次施行されます。
物流改正法は、荷待ち・荷役等時間の短縮や多重下請構造の是正等に向けて、荷主・物流事業者に対して新たな規制的措置を導入するものです。

関連リンク

改正貨物自動車運送事業法に基づく対応事項

物流改正法 のうち、改正された 貨物自動車運送事業法 は、取引環境の適正化を目的としたものであり、その概要は以下のとおりです。

【2025(令和7)年4月施行】

  • 真荷主(※)・トラック運送事業者等に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、有料道路利用料、燃料サーチャージ等を含む。)等について記載した書面交付を義務付け。

    ※真荷主:自らの事業に関して貨物自動車運送事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、貨物自動車運送事業者以外の者

  • トラック運送事業者等に対し、他のトラック運送事業者等の行う運送を利用する際には、当該他のトラック運送事業者等の健全な事業運営の確保に資する取組(健全化措置)を行う努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対し、当該取組に関する運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任を義務付け。
  • 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け。

併せて、運送業における多重下請構造の是正について、 トラック事業における多重下請構造検討会 で議論が進められています。

① 運送契約締結時の書面交付

作業や料金に関する契約内容を荷主・事業者で相互に確認し合い、トラブルの防止と適切な契約の履行を確保するため、以下を実施してください。

災害その他緊急やむを得ない場合等を除き、

真荷主及びトラック運送事業者が運送契約を締結する際には相互に、

トラック運送事業者等が他のトラック運送事業者等の行う運送を利用する際には委託元から委託先に対し、

以下の①から⑥の事項を記入した書面を交付すること。

  • ① 運送の役務の内容及び対価
  • 運送契約に運送の役務以外の役務(荷役作業、附帯業務等)が含まれる場合には、その内容及び対価
  • その他特別に生じる費用に係る料金(例:有料道路利用料、燃料サーチャージなど)
  • ④ 運送契約の当事者の氏名又は名称及び住所
  • ⑤ 運賃・料金の支払方法
  • ⑥ 書面の交付年月日

交付した書面の写しを1年間保存すること。

② 利用運送を行うに当たっての健全化措置の努力義務/
運送利用管理規程の作成、運送利用管理者の選任

トラック運送事業者等が利用運送を行う(他のトラック運送事業者の行う運送を利用する)場合には、

以下の発注適正化の措置(健全化措置)を講ずるよう努めてください。

  • 利用運送に要する費用の概算額を把握した上で、当該概算額を勘案して利用の申込みをすること。
  • 荷主が提示する運賃・料金が利用運送に要する費用の概算額を下回る場合にあっては、当該荷主に対し、運賃・料金について交渉をしたい旨を申し出ること。
  • 委託先のトラック運送事業者が更に他のトラック運送事業者の行う運送を利用する場合に関し、例えば「二以上の段階にわたる委託の制限(再々委託の制限)」等の条件を付すこと。

その貨物取扱量に応じて、以下を実施してください。

  • 前年度に行った利用運送に係る貨物取扱量の合計量が100万トン以上であった場合には、運送利用管理規程の作成、運送利用管理者の選任及び国土交通大臣への届出(※)を行うこと。

    ※ 届出期限は、利用運送に係る貨物取扱量の合計量が100万トン以上となった年度の翌年度の7月10日までです。
    また、一度届出を行っていただければ、変更等がない限り、翌年度以降改めて届出を行う必要はありません。

③ 実運送体制の管理簿の作成・必要な情報の通知

元請事業者は以下に沿って、実運送体制管理簿を作成してください。

  • 元請事業者は、真荷主から引き受けた1.5トン以上の貨物の運送について、他のトラック運送事業者の行う運送を利用したときは、貨物の運送ごとに、以下の①から③の事項を記載した実運送体制管理簿を作成すること。
    • ① 実運送事業者の商号又は名称
    • ② 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
    • ③ 実運送事業者の請負階層

    ※ ただし、真荷主から貨物の運送を引き受ける際に、元請事業者から実運送事業者に至るまでの一連の委託関係が明らかとなっている場合は、貨物の運送ごとに作成する必要はありません。

  • 元請事業者は、委託先の事業者に対して、元請事業者の連絡先や、荷主の名称などを通知すること。
  • 実運送体制管理簿は、貨物の運送の完了した日から1年間、営業所に備え置く必要があること。

元請事業者でないトラック運送事業者も、適切な実運送体制管理簿の作成に向けて、以下を実施してください。

  • 利用運送を行う事業者(他のトラック運送事業者の行う運送を利用する事業者)は、委託先の事業者に対して、元請事業者の連絡先や、委託先の事業者の請負階層等を通知すること。
  • 実運送事業者は、元請事業者に対して、以下の①から③の事項について通知すること。
    • ① 実運送事業者の商号又は名称
    • ② 実運送事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
    • ③ 実運送事業者の請負階層

(参考)改正貨物自動車運送事業法により新たに設けられた軽トラック運送事業者に対する規制

必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講、国土交通大臣への事故報告を義務付け。

国土交通省による公表対象に、軽トラック運送事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報等を追加。

新物効法に基づく対応事項

トラックドライバーの拘束時間の内訳。平均拘束時間は12時間26分。運転6時間43分、休憩1時間58分、荷待1時間34分、荷役1時間29分、点検等40分。出典:国土交通省「トラック輸送状況の実態調査(R2)」

物流改正法 のうち、改正後の 物資の流通の効率化に関する法律(新物効法) は、1運行あたり平均3時間超と言われるトラック運転者の荷待ち時間・荷役等時間の短縮や積載効率の向上等を通じて、物流負荷を軽減するとともに、物流の生産性を向上することを目的としたものであり、その概要は以下のとおりです。

【2025(令和7)年4月1日施行】

  • 荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定。
  • 上記の事業者の取組状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表を実施。

【2026(令和8)年4月施行(予定)】

  • 上記の事業者のうち一定規模以上のもの(特定事業者)に対し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、努力義務に係る措置の実施状況が不十分な場合、国が勧告・命令を実施。
  • さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付け。

これにより、新物効法は、2028(令和10)年度までに、以下の目標を達成することを目指しています。

① 全国のトラック輸送のうち5割の運行で1運行当たりの荷待ち・荷役等時間を1時間短縮(1人当たり年間125時間の短縮に相当)

② 全国のトラック輸送のうち5割の車両で積載効率50%を目指す
(全車両で積載効率を44%に増加することに相当)

※ いわゆる2024年問題として、2030年には34%の輸送力が不足する可能性が指摘されており、これに対応するためには、ドライバー1人当たり年間125時間の荷待ち・荷役等時間の短縮が必要であると言われています。

新物効法に基づき物流の効率化を図ることは、トラック運転者の長時間労働の是正や、賃上げを図ることにもつながります。
物流効率化のために取り組むべき措置(努力義務)については、 「合同会議取りまとめ」 に基づき、2025(令和7)年2月に定められた 貨物自動車運送事業者等の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令 をご確認いただき、例えば次のような取組に努めていただきますようお願いいたします。

① 積載効率の向上等

トラックの積載効率の向上等に向けて、過積載がないよう留意しつつ、荷主の方とも協力し、例えば次のような取組に努めていただくようお願いいたします。

② 新物効法に基づく荷主の取組への協力

荷主の方にも、荷待ち・荷役等時間の短縮に向けて、 こちら の取組をお願いしています。各種取組の実効性の確保に向けて、併せて以下にも取り組むことが重要です。

(取組例)

  • 荷待ち・荷役等時間、取組の効果の適切な把握や、荷主等の荷待ち・荷役等時間の把握への協力
  • 荷主等が提供している貨物等に関する情報の把握
  • 荷主等が提供するトラック予約受付システム等の利用
  • トラック運転者が必要以上に早く集荷・配達場所に到着することがないよう効率的な配車・運行
  • 荷主への 「標準仕様パレット」 の導入提案
  • 標準的運賃 を念頭に、共同輸配送のための個建て運賃の導入、リードタイムに応じた運賃設定などの提案
  • テールゲートリフターの導入、荷捌き施設の整備など積載効率向上に伴うトラック運転者の積卸し作業の負荷軽減 など

※ トラック運転者に荷役作業を行わせる際には、 「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」 を踏まえ、トラック運転者の安全にも配慮してください。

併せて、 荷主の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準となるべき事項を定める省令 もご参照ください。

荷待ち時間、荷役等時間の記録について

従来、トラック運転者による「荷待ち時間」「荷役等時間」の記録義務は、車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上の車両の場合に限られていましたが、 貨物自動車運送事業輸送安全規則 が2024(令和6)年10月に改正され、同記録義務の対象が、2025(令和7)年4月から全ての車両に拡大されます。

つきましては、以下の「荷待ち時間」「荷役等時間」の考え方を踏まえ、全ての車両について、「荷待ち時間」「荷役等時間」に関する業務記録の作成をお願いいたします。

【荷待ち時間】

到着時刻・時間帯の指示がない場合

→トラック運転者が集貨・配達を行う場所やその周辺の場所に到着した時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役等の開始時刻まで

到着時刻・時間帯の指示があった場合

トラック運転者が集貨・配達を行う場所やその周辺の場所に、

  • ① 指示された到着時刻・時間帯の始期よりも前に到着したとき
    →指示時刻等から荷役等の開始時刻まで
  • ② 指示された到着時刻・時間帯内に到着したとき
    →当該到着時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役等の開始時刻まで
  • ③ 指示時刻・時間帯の終期よりも後に到着した場合
    →当該到着時刻(到着後速やかに受付等を行う場合はその時刻)から荷役等の開始時刻まで

【荷役等時間】

トラック運転者が行う荷役、検品、荷造り、入庫・出庫、棚入れ・棚出し、仕分け、商品陳列、ラベル貼り、代金の取立て・立替えなど、運転業務に附帯する業務の開始時間から終了時間まで

トラック運転者の働き方改革を推進していくためには、長時間労働の削減と合わせて、賃上げも行っていくことが重要です。

「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン 」

賃上げの原資となる運賃の適正な収受に向けて、国土交通省は、荷待ち・荷役に係る費用、燃料高騰分、下請けに発注する際の手数料等も含めて適正に転嫁できるよう、標準的運賃について見直しを行い、2024(令和6)年3月に運賃水準を8%引き上げるとともに荷役の対価等を加算した新たな標準的運賃を告示しました。

運送事業者の皆さまにおかれましても、新たな標準的運賃をご確認の上、荷主の方との交渉等にご活用ください。

詳しくはこちら(PDF)

参考資料

※ 本資料に掲載されている改善基準告示は、改正前のものとなっております。
改正後の改善基準告示は こちら をご覧ください。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン

ドライバーの労働時間削減に向けて、荷主が参加すべきプロセスが簡単にわかります。

「取引環境と長時間労働の改善に向けた取組みの進め方」のステップおよび「改善に向けた取組みの類型と対応」について紹介しています。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン事例集

2ヵ年にわたり全国で実施した事例を荷主メリットともに整理しています。

ガイドラインで示した「改善に向けた取組みの類型」に合わせ、パイロット事業の事例を掲載したものです。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン(加工食品、飲料・酒物流編)

加工食品、飲料・酒物流における「取引環境と長時間労働の改善に向けた取組の進め方」と「課題解決に向けた取組の類型と対応」について紹介しています。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 紙・パルプ(洋紙・板紙分野)物流編

紙・パルプ(洋紙・板紙)物流における「取引環境と長時間労働の改善に向けた取組の進め方」と「課題解決に向けた取組の類型と対応」について紹介しています。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 紙・パルプ(家庭紙分野)物流編

紙・パルプ(家庭紙)物流における「取引環境と長時間労働の改善に向けた取組の進め方」と「課題解決に向けた取組の類型と対応」について紹介しています。

荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン 建設資材物流編

建設資材物流における「取引環境と長時間労働の改善に向けた取組の進め方」と「課題解決に向けた取組の類型と対応」について紹介しています。

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針

内閣官房と公正取引委員会が共同で策定した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化に向けて、発注者・受注者に求められる事項等をまとめたものです。
例えば、労務費上昇の理由は、 「標準的運賃」 などの公表資料を根拠資料として、受注者側が提示する価格を発注者側が尊重することなどが盛り込まれています。