トラック運転者の改善基準告示
改善基準告示とは?
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを言い、自動車運転者の長時間労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要であることから、トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間について基準等が設けられています。
しかしながら、脳・心臓疾患による労災支給決定件数において、運輸業・郵便業が全業種において最も支給決定件数の多い業種(令和3年度:59件(うち死亡の件数は22件))となるなど、依然として長時間・過重労働が課題となっています。また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要です。
改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年以降、改正は行われていませんでしたが、令和4年12月に自動車運転者の健康確保等の観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が改正されました(令和6年4月1日施行)。
改善基準告示改正のポイント
自動車運転者の時間外労働の上限は、令和6年4月から原則月 45 時間・年 360 時間、臨時的特別な事情がある場合でも年 960 時間となります。(詳しくは
こちら
︎
)
これも踏まえて、改善基準告示の見直しが行われました。(見直し後の改善基準告示は令和6年4月から適用されます。)
トラックの「改善基準告示」見直しのポイント
長時間労働・過重労働の実態にある自動車運転者の健康確保等の観点から、見直しを行ったもの。
改正された改善基準告示の主な内容(2024年4月適用開始)
2024年3月31日まで |
2024年4月1日以降 |
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1年の |
3,516時間以内 |
原 則:3,300時間以内 例外(※1):3,400時間以内 |
1か月の |
293時間以内 |
原 則:284時間以内 例外(※1):310時間以内(年6か月まで) |
1日の |
継続8時間以上 |
原則: 例外: |
※1 労使協定により延長可(①②を満たす必要あり)
- ① 284時間超は連続3か月まで。
- ② 1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める。
※2 1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行の走行距離が450㎞以上の貨物運送)で、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合
- 拘束時間…使用者に拘束されている時間のこと。(「労働時間」+「休憩時間」)
(会社へ出社(始業)し、仕事を終えて会社から退社(終業)するまでの時間) - 休息期間…使用者の拘束を受けない期間のこと。(業務終了時刻から、次の始業時刻までの時間)
詳細はパンフレット 「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」 ︎ をご覧ください。
拘束時間・休息期間のイメージ図
改善基準告示関係資料
(2024年4月以降)
(2024年3月まで)
※その他、働き方改革関係資料として以下もご覧ください。
改善基準告示の Q&A
<トラック運転者の範囲>
- Q1:トラック運転者に該当するのは運送事業者のトラック運転者だけですか?
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A1
改善基準告示におけるトラック運転者とは、運送事業の会社で働くトラックの運転者に限らず、旅客自動車運送事業(ハイヤー・タクシー及びバス)及び貨物自動車運送事業(トラック)以外の事業に従事する自動車運転者であって、主として人以外を運送することを目的とする自動車の運転の業務に従事するものを含みます。例えば、工場等の製造業における配達部門のトラック運転者等についても、運転業務を主とする場合は改善基準告示におけるトラック運転者に該当します。
<拘束時間について>
- Q2:トラック運転者の拘束時間の上限時間とは?
-
A2
年間の総拘束時間が3,300時間かつ、1か月の拘束時間が284時間を超えないものとしてとしてください。ただし、労使協定により年間6か月までは、年間の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月の拘束時間を310時間まで延長することができます。この場合、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間を超えないように努めてください。
- Q3:トラック運転者の一日の拘束時間は?
-
A3
1日(始業時刻から起算し24時間)について、13時間を超えないものとし、拘束時間を延長する場合は、1日についての拘束時間の限度(最大拘束時間)は15時間です。ただし、1週間における運行が全て長距離貨物運送(450km以上)で、かつ、一の運行(勤務先を出発し、帰着するまで)における休息期間が住所地以外の場所である場合、1週につき2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができます。いずれにしても、14時間を超える回数(週2回までが目安)をできるだけ少なくするよう努めるようにしてください。
<休息期間について>
- Q4:トラック運転者の休息期間の取扱いについては?
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A4
勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとしてください。ただし、1週における運行が全て長距離貨物運送(450km以上)で、かつ、一の運行(勤務先を出発し、帰着するまで)の休息期間が住所地以外の場所である場合、1週につき2回に限り、継続8時間以上とすることができます。この場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとします(休息期間のいずれかが9時間を下回る場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとします)。
<運転時間について>
- Q5:トラック運転者の運転時間の限度は何時間まで?
-
A5
2日を平均し1日当たり9時間、2週を平均して1週当たり44時間を超えないものとします。
<連続運転時間について>
- Q6:トラック運転者の連続運転時間の上限時間は?
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A6
連続運転時間(1回がおおむね10分以上、かつ、合計が30分以上の運転を中断することなく連続して運転する時間)は、4時間を超えないものとしてください。
「おおむね10分以上」とは、10分未満の運転の中断が3回以上連続していないこと等を指します。
ただし、サービスエリア、パーキングエリア等に駐車又は停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、30分まで延長することができるものとします。
<休息期間の分割の特例について>
- Q7:勤務終了後に継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合は?
-
A7
業務の必要上、勤務終了後に継続9時間以上(※)の休息期間を与えることが困難な場合、当分の間、一定期間(1か月程度を限度)における全勤務回数の2分の1を限度に休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。
※長距離貨物運送に従事する自動車運転者であって、1週における運行がすべて長距離貨物運送で、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所の場合は、継続8時間以上としてください。
また、分割した休息期間は、1日に1回当たり継続3時間以上、2分割の場合は合計10時間以上としてください。分割は、2分割に限らず3分割も認められますが、3分割された休息期間は1日に合計12時間以上でなければなりません。休息期間が3分割される日が連続しないよう努めてください。
<2人乗務の特例について>
- Q8:2人乗務の場合の最大拘束時間は?
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A8
トラック運転者が1台の車両に2人以上乗務する場合(車両に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る)、最大拘束時間を20時間まで延長することができます。ただし、当該設備が次のいずれにも該当する車両内ベッド又はこれに準ずるものであり、かつ、一の運行が終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるときは、拘束時間を24時間まで延長することができます。また、当該車両内ベッド等において、8時間以上の仮眠時間を与える場合に、拘束時間を28時間まで延長することができます。
- ア車両内ベッドは、長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること。
- イ車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。
<隔日勤務、フェリー特例について>
- Q9:隔日勤務の拘束時間についての特例とは?
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A9
2暦日における拘束時間は21時間を超えないものとし、事業場内仮眠施設又は同種の施設において、4時間以上の仮眠時間を与える場合、2週につき3回を限度に、2暦日における拘束時間を24時間まで延長することができます。この場合、2週における総拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えないものとします。勤務終了後、継続20時間以上の休息期間を与えなければなりません。
- Q10:フェリー乗船時間についての取扱いについては?
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A10
フェリー乗船時間は、原則、休息期間として取扱います。与えるべき休息期間の時間から、フェリー乗船中の休息期間について減ずることができます。ただし、減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならないものとします(2人乗務の場合を除く)。なお、フェリー乗船時間が8時間(2人乗務の場合は4時間、隔日勤務の場合は20時間)を超える場合には、原則、フェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものとします。
<予期し得ない事象に遭遇した場合について>
- Q11:事故や災害などの予期しない場合についての対応は?
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A11
事故、故障、災害等、通常予期しないことに遭遇し、一定の遅延が生じた場合は、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たり、対応に要した時間を除くことができます。勤務終了後は、通常通りの休息期間を与えるものとします。休息時間は、勤務終了後、継続11時間以上を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないようにしてください。